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カヌースプリント競技の安全対策(6)

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筑波大学近藤様寄稿記事(全6回)。前回からの続き:No6 カヌースプリント競技の安全対策
著者:近藤許仁(筑波大学・体育専門学群)内容に関する問い合わせ先:田神一美(筑波大学・体育系教授・スポーツ衛生学研究
室)
イラスト:ぬまくろ

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カヌースプリント競技の安全対策(その2-3:概要)

連盟、協会、指導者について
   高体連の調査によると、平成20年度全国高体連カヌー専門部加盟校98校の顧問のうち30%がカヌー競技に必要な何らかの資格・免許を有していないと示している(図8)。
高校での部活動の安全をより確かなものにするためにも資格を取ることは重要である。
また、大学カヌーではコーチや顧問などがおらず、学生による自主的な活動になることがほとんどであり、競技者自身の安全意識が事故を防ぐことに繋がる。
この安全意識を高校での部活動で学ぶためにも、顧問・指導者が資格を持つことは重要であると考える。
図8. 高等学校カヌー部顧問の資格・免許(高等学校におけるカヌー競技の実態調査)tsuku data10 - カヌースプリント競技の安全対策(6)

   また、関係者間でコミュニケーションをとることも必要になる。指導者、競技者、保護者がカヌーのリスクを認知し、それに対する安全対策を3者が納得できるように設定することは、死というリスクのあるカヌー競技においては重要なことである。
過去の事故事例の共有体制については、ボート協会では各都道府県に1名以上設置されるセーフティ・アドバイザーが団体からインシデント/アクシデントレポートの提出を受け、日本ボート協会に送っている。これによって事故がどのように発生しているのかをボート協会は把握している。
それに対しカヌー連盟では、都道府県単位ではインシデント/アクシデントレポートを記録している場所もあるが、連盟自体は特に記録していない。
カヌー競技は競技人口が少ない分、事故の事例も少なくなってしまうため、広く集める必要がある。そのためにも連盟ホームページにレポートフォームを設置するなど、連盟主導で進めていかなければならない。
また、平成23年からスポーツ基本法が施行され、スポーツ団体(スポーツの振興を行うことを主たる目的とする団体、基本法2条2項)は「スポーツの安全の確保に配慮しつつ、スポーツの推進に主体的に取り組むよう努める」(基本法5条1項)、とされている。
これによりスポーツ団体はスポーツ事故について原因究明や対策をとる努力をしなければ、違法であるとの判断を下される可能性も出てきた。
現状ではリスクに対する対策がとれているとは言い難いため、今後はスポーツ事故に対してより真摯に向き合わなければならない。
カヌー界の中だけで対策を考えるのではなく、法律や、医学の専門家とコミュニケーションをとりつつ、様々な視点から対策を考えていくことが重要である。

結論


・風については競技会中断の指標になっている風速10m/sという値は過去のボート事故の気象状況から判断すると緩過ぎると考えねばならない。水域の特徴や競技レベルにあわせ、ルールを設けていくことが必要になる。また、突風などの危険もあるので、天候には十分に注意しなければならない。
・冷水に関しては記載がまったくないため、冷水のリスクを周知し、救命胴衣やウェットスーツ、救助艇など対策をとらねばならない。
・ライフジャケット強制使用には、18歳以下は着用義務があるが、それ以上になると携行義務もない。ライフジャケットのルールは年齢に加え、気温、水温、風、波、泳力を考慮することが必要になる。また、ベルト式のライフジャケットなど、競技の妨げにならないものの採用・開発が必要になる。
・泳力については記載がまったくない。突然の転覆や冷水への落下時にパニックを起こさないように、最低限の泳力を義務付ける必要がある。
・指導者の資格保有率を高めることで、カヌーの安全を確保するとともに、競技者自身にも安全意識を芽生えさせる必要がある。
・インシデント・アクシデントレポートの作成・共有の体制ができていない。日本カヌー連盟がレポートフォームを作るなどして主導し、事故事例の管理と対策をすべきである。これらの情報を基にして、カヌー競技のリスクの公表に向かう取り組みが求められる。

謝辞


   本研究にあたり、様々なご指導を頂いた指導教員の田神一美教授と鈴木耕太郎特任助教に心からお礼申し上げます。また、法令についてご教示いただいた斎藤健司教授にお礼申し上げます。

参考文献


1.細谷悦哉(1998年)「カヌー教本」(社団法人日本カヌー連盟)
2.朝日新聞社(1962年3月10日)朝刊 15P
3.越水高士 「高等学校におけるカヌー競技の実態調査~いかにして安全意識を共有できるか~」 〈http://zen-koukoucanoe.com/_userdata/information/inf_jittaichousa.pdf〉(アクセス日:2013年11月9日)
4.社団法人日本ボート協会 「ローイング安全マニュアル2011年版」 〈http://www.jara.or.jp/info/2011/saftymanual.pdf〉(アクセス日:2013年11月9日)
5.朝日新聞社(1963年7月27日)朝刊 14P~15P
6.朝日新聞社(1967年5月9日)朝刊 15P
7.社団法人日本カヌー連盟 「平成25年度版緊急管理マニュアル」 〈http://www.canoe.or.jp/tournament/result/manual.pdf〉 (アクセス日:2013年11月10日)
8.社団法人日本ボート協会 「ボート競技における安全ガイドラインについて」 〈http://www.jara.or.jp/info/2006/guidelines.html〉(アクセス日:2013年11月10日)
9.武田行生(2012年)『海と安全』第46巻夏号 3P 公益社団法人日本海難防止協会
10.日本弁護士連合会(2013年)「スポーツ事故の法務 裁判例からみる安全配慮義務と責任論」
11.野間口英敏(1991年)「体育・スポーツ事故[1980~89年]地域編」(東海大学出版会)
12.菅原哲朗(2005年)「スポーツ法危機管理学」(株式会社エイデル研究所)
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以上全6回で投稿いただきました記事は終了となります。
著者:近藤許仁様:田神一美様 ありがとうございました。
カヌーカヤックネットマガジン

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著者:近藤許仁(筑波大学・体育専門学群)内容に関する問い合わせ先:田神一美(筑波大学・体育系教授・スポーツ衛生学研究室)


追記
田神一美様(筑波大学・体育系教授・スポーツ衛生学研究室)は平成29年3月をもちまして、定年退職されました。

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