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カヌースプリント競技の安全対策(5)

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筑波大学近藤様寄稿記事(全6回)。前回からの続き:No5 カヌースプリント競技の安全対策
著者:近藤許仁(筑波大学・体育専門学群)内容に関する問い合わせ先:田神一美(筑波大学・体育系教授・スポーツ衛生学研究
室)
イラスト:ぬまくろ

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カヌースプリント競技の安全対策(その2-2:概要)

競技者に関する要因
   カヌーとボートに共通して泳げないために死亡した事例が多い。泳力を過信し、浮力体である艇から離れて死亡した例も多いが、泳げない人では落水後にパニックに陥る可能性が高い。救助が来るまでは浮いていなければならないので、最低限の泳力は必要となる。
ボート協会では既に泳力が必要であることを競漕規則の中で定めており、カヌーでも泳力テストを取り入れ、合格できない人々にはライフジャケットを義務付ける必要であると考える。
装備に関する要因
その2、表1に示したように、カヌーの事故事例が起こった最大の要因はライフジャケットの不使用にあると考えられる。
ライフジャケットをつけていても低体温症などの危険はあるが、少なくとも人が近くにいるならば、救助が来るまで浮いていることができれば溺死の危険は小さくすることができる。
カヌースプリント競技規則第29条に「艇には浮力体を装備しなければならない」と記載されており、カヌー艇自体も浮力体になるが、水に落ちた時に、すぐそばに艇があるとは限らない。
風で流されていた場合はそこまで泳がなければならないし、艇内に水が大量に入った場合は浮力が落ち、かなり不安定な状態になる。
図5は2011年の漁船からの海中転落者の生存率を示している。

ライフジャケット着用者が75%生存しているのに対し、非着用者は生存率49%となっており、ライフジャケットを着用することで生存率を上げることができることを示している。
tsuku data07 - カヌースプリント競技の安全対策(5)の生存率(海上保安庁)

ボート競技では救命具を携行することは全年齢で定められており、年齢や泳力、水温など、細かくルールが定められている。
それに対しカヌースプリントでは18歳以下には着用が義務付けられているが、それ以上では初心者以外が着けることはない。
確かにカヌーをするうえでは、ライフジャケットは上半身の動きを阻害する邪魔なものであるが、着用だけでなくボート競技のように携行するという選択肢もある。
また、図6が示すように現在ではコンパクトで邪魔にならないベルト式のライフジャケットも開発されている。
小さくはあるが浮力は20kgあり、法定浮力である7.5kgを大きく上回っている。
ベルト式だけではなく、今後はカヌー競技に合ったライフジャケットを開発し、誰もがストレスなく着用できるような環境を作っていくことが重要である。
また、ライフジャケット以外にも、ホイッスルなどの救命具を携行するようにすればより安全性は高まる。
tsuku data08 - カヌースプリント競技の安全対策(5)http://www.lifejacket.jp/products/inflatable.html

http://www.kazi.co.jp/relatedsite/boatnavi/m-info/bc/vol_1/bc_v01-2.html
 
また、選手が転覆した際の救助に最も有効であるのがモーターボートであるが、図7が示すように平成20年度全国高体連カヌー専門部加盟校98校のうち、モーターボートを持っていない高校が30%もある。
1985年の高校部活動の顧問が死亡した事例はもしもモーターボートを出していたら死亡することもなかった可能性が高く、日常的にモーターボートを出す必要はないかもしれないが、転覆時の備えとして必要だと考える。
高価でモーターボートは買えない高校もあると思うが、安定性の高い手漕ぎボートなど、いざという時のための備えとして何らかの対策をとる必要があると考える。 
図7. モーターボートの使用について(高等学校におけるカヌー競技の実態調査)tsuku data09 - カヌースプリント競技の安全対策(5)

第6回(最終回)へつづく

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著者:近藤許仁(筑波大学・体育専門学群)内容に関する問い合わせ先:田神一美(筑波大学・体育系教授・スポーツ衛生学研究室)
第6回へつづく

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