カヌーのおこしかた と 救命胴衣の関係

今年もまたカヌーの死亡事故が起きました。救命胴衣を着けていないこともありましたが、なぜ死亡事故につながってしまうのか、わからない人も多いと思います。
今回はカヌーのおこしかたと、なぜ救命胴衣が必要なのか?とを関連付けて説明します。
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日本のカヌーでは救命胴衣(PFD)を付けずにプレイする人もいます。
水の中ぐらい大したことないと安易に考えているからでしょう。
今回、実際には、「水の力や波の力の前では、人間は対処できないことがある」ということことを知ることで、自分の命を守ることができます。
安全への考え方の、レベルアップへの第一歩としてのアドバイスです。
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安全カヌーへの啓蒙啓発のために公開記事にします。


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まず、カヌーを買ってから、転覆などしないと思っている人がほとんどでしょう。また、転覆なんてしたくないと恐る恐る乗っていて、実は不安だけど楽しそうに乗っているのかもしれません。
地上でカヌーを運び、起こしたり、車に乗せたりするのと、水の上で自分が水中にいる時にカヌーを起こすのでは、違います。
それは、固定された場所が無いという事が大きな問題です。地上では、足や身体がしっかりと大地についているので、力を入れてもその力を大地が受け止めてくれるおかげで、カヌーを支えたりすることができるのです。
このサイトではよく登場する、エネルギーの問題です。エネルギーを発しているところと作用しているところがポイントです。
しかし、水中では地上の様に体を固定できるわけではありません。力を入れようにも、体を支える部分が逃げてしまって、上手く力が伝わりません。
そのため、おこしかたを知らない初心者が、溺れてしまうのです。
体育の授業で泳げたや、立ち泳ぎができた。そんな考えは実践では、100うちの3程度。
水中や水の中でのものを動かすむずかしさを知っていれば、その考え方の先を見て行動ができるようになります。


◆まずは静水で練習。
静水で一度転覆させてみると、いかに起こすのが難しいのかが良くわかります。
行う場合は必ず救助できる人と一緒におこなってください。(初心者同士は巻き込み事故になる可能性があるので、経験者とやりましょう。)
*行う前の注意事項!
①足をつく場所は必ず経験者がチェックしてください。
うかつに足をつくと、水草や沈んだ木などその他不明物によって足が絡んで抜け出せなくなる場合がありますので、きれいな水のチェックできる場所を選んでください。
②救助可能な場所とエスケープゾーンの確保。
③安全のための知識がある人とのレッスン。
●自己責任で行ってください。



・レッスン1:足がつく場所でカヌーを起こす。

図①:初心者がやってしまう行動に横からアプローチしてしまう事があります。
カヌーの幅は約60cm。水上から上半身がそれ以上出ていればひっくり返せる可能性はあります、しかし、足がついていればの話です。
足がつかない場所では、まず失敗するでしょう。何度チャレンジしても、この方法では戻せないでしょう。
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もう気づいている方もいると思いますが、PFD(救命胴衣)を着用していないと、体は自分が浮くので精いっぱいです。
その上30kgもあるカヌーが転覆してしまい、起こすときに、カヌーの断面のウォーターラインを中心軸に転回しますので、容積の半分以上の水が入ることになります。
カヌーを知っていれば100%起こせないことはわかります。
知らなければ、横からおこそうと繰り返し、失敗、多大な体力を使い果たして溺れてしまうことが予想できます。
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まず、スターン側に移動します(ここで言うスターンは両端)
図②:この位置からボートを掴みひねります。
ボート幅も狭くなり、大人の男性なら十分に手が回ることでしょう。
一気にひっくり返します。コツがわかればすぐにできるようになるでしょう。できなければパワーが足りない可能性があります。カヌーで出かける前に体力を増強しましょう。
2人の場合は両端へ一人ずつ分かれます。
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◆フローティング材が必要な理由!
フローティング用の素材を付けておくと言う意味がこの時点でわかると思います。
現在のボートは、基本沈まないように加工されているものが多くはなってきていますが、沈んでしまうタイプもあります。
水が満水で乗り込んだら沈んでいったなんてことはありえます。
浮揚補助のためのフローティング材は初心者に限らず、着けることをお勧めします。競技に出るようなパドリングのスキルが高い人でさえも、必ず付けなければならないものもあります。
つまりカヌーカヤックなどボートのスキルが高い人ほど救命胴衣やフローティング材などに注意をはらっているという事です。
カヌーにも前後に付けておくことをお勧めします。tenp canoe04 - カヌーのおこしかた と 救命胴衣の関係
前後にフロートをつけることで安全面がぐっと上がります。
そして、カヌーに限らず、全てのボートで、水をかきだすための「バケツ」や「スポンジ」は必須です。
◆難しい再乗り込み! RE-ENTRY
初心者は1人の場合だと、おこしてから乗り込めない人は多いのです。初心者ばかりでは、何人いても乗り込めないでしょうが…PFDを付けていなければ、溺れることは目に見えています。
波が無ければ、ボートを揺らすことで中の水を減らすことはできます。
2人いる場合はボートの両サイドに1人ずつボートのGUNWALLガンノルを掴み、一人づつ乗り込みます。片方は傾きをおさえる役割をします。(どうでもいい話ですが、ガンネルと日本では書いてあるものが良く見られますが、発音したとき100%通じません、ガンノルなら通じるので、こちらの名称を利用しています。)
1人の場合はいくつか乗り込み方があります。
カヌーカヤックジャパン史上最強ハンドブックにはパドルにフローティングを付けて乗り込む方法を書きました。
波が無い場合には、船の水の量をある程度揺さぶって減らし乗っても沈まないことが感じられるようにします。
ボート中央部の幅の広い部分へ移動。幅が広いという事は、転覆しずらい場所ということになりますが、バランスの加重を受ける力が弱い(幅への力加減になってしまう)ので、それよりも左右どちらかに移動します図③シート位置ぐらい。
そこで、PFDの浮き補助が大切です。体を沈めれば、反動で浮かび上がります。上がる前の水中の足はハサミ足で水を掴みます。その上がりを利用してボートのガンノルを掴みサーフィンよろしく体をすべり込ませます。この時反対側のガンノルを掴むのは良いですが、力を入れ過ぎると自分側に傾いてきて、また転覆してしまうので、バランスを感じながら入り込むことです。長い面(例えば後部スターンの座席ぐらいの位置から、バウ方向へ意識した体重をかける)に対して体重をかけてもボートが受けてくれるので乗り込みやすくなります。図5(青の自分の体重の方向よりも、赤のボートのベクトルの方が長い)乗り込む向きはやりやすい方でOK(カヤックの場合は後方からコックピット方向に向かって乗り込んでいきます。)
またパドルを利用した乗り込み方も可能です。
練習で必ず乗り込めるようにしてください。
ボート内の水が少なければ少ないほど乗り込みやすくなります。
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裏返ったボートの下にもぐって一気に持ち上げる方法もありますが、下手をするとボートが自分にぶつかってくるので注意してください。
なんか、話を聞いただけでも難しそうと思った方、あなたはセンスがあります。
想像する能力があることは、それに対応する想像ができるからです。


◆足が届かない深さで練習。
ここからが本番です。
これを、やるかやらないかで生存確率はものすごく変わります。
これが、乗り込めなければ、カヌーを行う場所やシチュエーションがかなり制限されるでしょう。海などへ行けば、危険な事になってしまう可能性は大きくなります。
*初心者に限らず、年配者向けにも、今では色々なサポートグッズが売られています。
乗り込み方向の反対側にバランスを取るアンカーや、折り畳みバケツで水をかきだすグッズや、登りやすくするための階段なども…
たまにはショップに訪れたり、ネットでメーカーのサイトなどぐるぐるしていれば面白いグッズが見つかるかもしれません。
情報も大事なツールです。
※上記の注意事項の基で練習は行ってください。


◆なぜ、経験者でもカヌーを起こせないのか?
昨今の強風や、波の合成波(別記事で書きました)での状況の恐ろしさを説明します。
これはかなりの経験者であっても、カヌーを起こすことは不可能になる場合も多く、また接触によって大怪我に至ったり、気絶や、冬場の凍死事故につながる可能性を秘めている危険なものです。
複合波は湖でもおきますし、また海でも起きます。川の流れだけではありません。
転覆し、水面にいる時に波の高さが高いほど、カヌーは暴れます。場合によっては前後左右ボートの挙動が違ってしまいます。そんな中では、ボートのヘリを掴んでいるだけで精いっぱい。転覆して裏返っていれば、掴むことさえできません。
これはPFDを着けていなければ、ほぼ100%死ぬ事故につながります。
PFDを付けていてもボートを起こすことは不可能なケースは多々あります。
0.5秒ごとに波が自分にぶつかってきます。その波が50cmあったら息をするのさえ難しいでしょう。
裏返ったボートは波によって揺れ、丸太のようにぶつかってきます。
このような時に上手く裏返ったボートの下に空気が入っていればエスケープは可能ですが、周りが見えなくなるため、位置がわからなくなり遭難する場合もあります。(パドルは離さないこと)
また水の温度が水面と水中で違う場合があり、水中の流れによって冷たい水のエリアに体が浸かってしまう事があります。これは俗に言う低体温症、酸素が脳に行かなくなり気絶、体温低下による死亡につながる場合もあります。(ハンドブックにかいてあります)。

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この複合波は見たことが無い人にはどれほど恐ろしいものかわからないでしょう。強いて例えるなら洗濯機の中に入れられたボートと言えるかもしれません。
そんな中でボートを起こして乗り込みなおすなど不可能。乗っても再転覆する可能性もあり、状況によっては、波がおさまるまで体力温存したほうが良いかもしれません。
昨今の急激な強風や、大きな湖などに起きる波の影響をしらないと、ここなら安全だろうとカヌーに安易に乗ると危険な状態であることさえ分からないでしょう。


◆まとめ
・なぜ、救命胴衣(PFD)が必要なのかがわかっていただけましたでしょうか?
自分が入水した時に役立つのがPFD、つまりボートから落ちた時や、転覆した時に自分が助かるために考えられた道具なのです。
そして、波が起きた時の自然の中での自分の存在の小ささが、なんとなくでもわかってもらえれば、この先安全への考え方の基礎の一つとなると思います。
・安全への対処は、自分へのリスクマネジメント。
・安全への配慮はしすぎて越したことは無い。
・「このぐらい大丈夫」などという経験者は、「カヌーに乗った事がある」程度の知識しかないことが多く、安全を軽視している人と遊んだり、ツーリングに行かないことが自分を守ることになる。
・自然現象はもはや数年前と違うことは天気予報のニュースなどでもよく言われています。古い図書などを参考にせず、新しい情報を意識することが大切です。


今年も死亡事故が起きてしまいました。でたらめなカヌーへの知識をスタンダードにした者がいるからです。完全に●●氏のでたらめなカヌーへの関わりを世間に発信したことが原因になっていると思われます。このサイトでは彼は損害賠償と永久の罪を背負う判決をだしました。
このような、間違ったことを訂正するために、できるだけ初心者にも分かり易いように説明しました。
EUを中心とした海外では、安全への知識や配慮は小学生の授業でも行っており、日本で紹介されていたような安全を無視した救命胴衣を着けないで漕ぐのがかっこいいような風潮はありえません。
まさに、バイクで言うなら、ヘルメットをかぶらないのがかっこいいという考え方なのでしょう。しかし世界中のプロは全員かぶっていますし、子供でさえレースで着けています。正しく行う事とは安全が優先されることで、それがかっこよさのスタンダードなのです。
ちっぽけな間違ったかっこよさにあこがれた時点で、悲しい大人と周囲に見られてしまうでしょう。
tenp canoe09 - カヌーのおこしかた と 救命胴衣の関係
安全への知識などは「カヌーカヤックジャパン史上最強ハンドブック」にもかなりのページを割いています。
みなさまの、楽しいカヌー カヤックライフ の為に新しいスタンダードを定着させるのも、このサイトの使命かもしれません…。

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